仕事の属人化って何？放置が絶対NGな理由と解消するテクニックを解説

特定の社員が欠けると業務が遂行できない状態を属人化といいます。原因は会社側の体制や社員側の意図によるものなど、さまざまな原因が考えられます。

属人化が原因で仕事が休めないなどの実害があり、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

属人化は必ずしも悪とは限りませんが、属人化してはいけない仕事は積極的に標準化すべきといえます。

この記事では、属人化がもたらす問題点や解消の手立てについて説明します。

属人化とは

属人化とは、組織や業務などが特定の社員に強く依存している状態をいいます。

特定の人が欠けてしまうと業務の停滞や、ノウハウが喪失するリスクがあります。

会社組織や個人の成長機会を失うことにもなるので、将来的に見てもデメリットが大きい状態です。

属人化によるリスク回避のためには知識の共有、役割の明確化などが必要です。

不必要な属人化を防ぐことは、生産性と作業効率の向上には欠かせません。

属人化による7つのデメリット・リスク

属人化は働く側にも会社側にも、さまざまなデメリットやリスクがあります。具体的なデメリットやリスクを知って、属人化を解消する手立てにしてください。

以下が7つのデメリットです。

・業務効率の低下
・仕事の質が保ちにくい
・スキルやノウハウが失われるリスクが高い
・隠蔽や不正の温床になる
・長時間労働になりやすい
・休暇が取りにくい
・人材育成・スキルアップの妨げになる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

業務効率の低下

属人化は業務効率の低下をまねき、成長発展の機会を失わせてしまいます。

通常オフィス内で行う業務は、複数人が協力して仕事に取り組む方が効率的です。

特定の社員にしかできない業務があると、不在時に業務が停滞するのが問題になります。

また、属人化すると、新たなアイディアや視点が生まれにくいのも問題です。

結果として効率の悪い方法に終始し、成長や発展がしにくくなるでしょう。

属人化が起こると特定の社員に業務を依存することになり、効率の低下や停滞をまねきます。

仕事の質が保ちにくい

特定の社員が不在になると、仕事の質が保たれにくくなるデメリットもあります。

特定のスキルや経験、知識が特定の社員に集約されているので、個人の状況に成果物の質が左右されるのが理由です。

成果物の質や顧客対応に一貫性がないと、顧客との信頼関係に悪影響を与えるでしょう。

スキルやノウハウが失われるリスクが高い

特定の社員が退職や休職をした結果、大切なノウハウやスキルを失うリスクが高くなります。

属人化が長期化した結果、ブラックボックス化する場合が少なくありません。

ブラックボックス化とは、特定の社員しか業務のプロセスや内容を知らない状態です。

社員の退職や休職にともなって、スキルやノウハウを失うリスクが高いのが問題になります。

ブラックボックス化を防ぐ目的でも、属人化を解消する必要があるでしょう。

隠蔽や不正の温床になる

業務全般の把握を特定の社員に任せている状態は、隠蔽や不正のリスクを高めます。

属人化が長期化すると、仕事への緊張感が失われ社員同士の馴れ合いな関係ができてしまいます。

馴れ合いや緊張感のなさは、ミスや不正の隠蔽や黙認を引き起こす可能性があります。

業務の透明性を確保するためにも、特定の社員だけに業務を把握させるのは避けなければなりません。

長時間労働になりやすい

属人化によって、長時間労働がたびたび発生するのも悩ましい問題です。

特定の社員だけが業務を担当することで、結果として長時間労働が増加してしまいます。

長時間労働は心身への負担を増大させ、業務の質にも悪影響を及ぼす可能性があります。

属人化が慢性化し、特定の人に過剰な負担をかける状態は避けなければなりません。

休暇が取りにくい

長時間労働だけではなく、休暇が取りにくいのも問題になります。

特定の業務を属人化させると、その人が休暇を取ると業務が停滞する可能性があります。

特に年中無休で運用するものや顧客対応が関わってくる場合、休暇取得はより困難になるでしょう。

ワークライフバランスが崩れないよう、休暇は平等に取れるようにする必要があります。

人材育成・スキルアップの妨げになる

経験できる業務が限られてしまうことで、新たな人材育成やスキルアップの機会が少なくなります。

属人化は社員のスキルアップや人材育成がしにくくなり、組織全体の成長の妨げになります。

特に新人や若手が成長するためには、さまざまな業務を経験し新しいスキルを学ぶ機会は重要です。

人材育成やスキルアップの機会を損なうので、会社の将来を考えると属人化の解消は必要になります。

属人化を招く3つの原因

デメリットが多いのに、なぜ属人化を招いてしまうのか疑問に思う方もいるでしょう。

属人化は会社の状況が原因の場合と、個人的な利益のために進んで属人化している場合があります。

この項目では、具体的な属人化の原因について解説していきます。

 属人化を招く原因は以下の3つです。

・慢性的な人手不足
・マニュアルが整備されていない
・属人化をあえて望む社員の存在

慢性的な人手不足

属人化を解消するための人員やコストをかけられず、属人化が続いている場合が多々あります。

人手不足のため日々の業務をこなすのに精一杯で、属人化を問題視する余裕がないのです。

特定の人物が退職した時に初めて属人化の問題に直面し、混乱する場合も少なくありません。

忙しすぎて属人化を解消する余裕がないので、属人化自体を問題視されていないケースが多くあります。

マニュアルが整備されていない

実用的なマニュアルがないと、経験や技術に依存することが増え属人化の原因になります。

教育にばらつきが出るので、重要な知識や技術を一部の社員だけが知ることになります。

結果として特定の人物がいないと業務内容がわからない状態になり、属人化を招いてしまいます。

マニュアルは業務の指針になるので、仕事の属人化を防ぐのには必須といえるでしょう。

属人化をあえて望む社員の存在

さまざまな理由で、属人化をあえて望む社員は少なからず存在します。

属人化の解消が評価に直結しないことや、変化を望まないのが多い理由です。

中には社内における自分の立場や重要性を保つために、属人化をあえて望む場合もあるでしょう。

この場合、属人化を望む社員は職場内での立場が強い人物である場合が多いです。

そのため業務を標準化しようとしても、特定の社員による反対に悩む場合が少なくありません。

属人化を解消するメリットを感じられず、反対する社員がいる場合もあります。

属人化してはいけない業務5選

業務の中には、属人化によって多大なデメリットを受ける業務が存在します。

以下の業務で属人化している場合は危険信号なので、ぜひ確認してみてください。

・事務や経理業務
・プロジェクトや顧客の管理
・問い合わせ窓口
・セキュリティ関連業務
・自社製品やサービスについての説明

事務や経理業務

事務や経理業務はミスを防ぐ・不正の温床になるリスクを避ける理由から、属人化してはいけません。

業務の中でも特に事務や経理業務は、万が一誤りがあると法的な問題を引き起こす可能性があります。

業務を標準化し複数の人に分散させることで、間違いを見逃すリスクを軽減できます。

また、情報操作や横領などの不正のリスクについても忘れてはいけません。

複数の人が業務を分担するなど、透明感のある職場環境が求められます。

プロジェクトや顧客の管理

複数の人が携わるプロジェクトや顧客の管理は、誰でも同じ対応ができる状態であることが必要です。

特定の社員が不在時になると対応が滞るようだと、顧客に迷惑がかかり不信感の原因になってしまいます。

特に顧客の情報については、顧客ごと失うリスクがあるので属人化は避けるべきでしょう。

プロジェクトや顧客の管理は、関係者全員が情報共有することが重要になります。

問い合わせ窓口

お問い合わせ窓口は業務を標準化し、複数人が担当するのが望ましいでしょう。

顧客からの高い満足度を維持しクレームを回避するためには、一貫性のある対応が不可欠です。

お問い合わせ窓口は、精神的に負荷の大きい業種であることも考慮する必要があります。

複数の人に業務を分散させることで、社員の疲弊も防げます。

特定の社員への負荷を避け、一貫性のある対応のためには属人化は避ける必要があります。

セキュリティ関連業務

問題発生時に迅速な対応が必要なセキュリティ関連業務も、属人化は避けるべきでしょう。

セキュリティ関連業務は、24時間365日の対応が必須の業務です。

円滑な対応のためには、複数の人が業務を担えるようにする必要があります。

また、不正やミスを防ぐという意味でも、複数の人が対応する必要があるでしょう。

セキュリティ業務は組織全体に影響を及ぼす業務であり、複数の人が担当し連続性を保つ必要があります。

自社製品やサービスについての説明

顧客に対する製品やサービスの説明は属人化せず、一貫性をもたせる必要があります。

社員それぞれの解釈や説明スタイルにより、情報にばらつきが出るのを避ける必要があるためです。

自社製品やサービスへの知識を共有しスキルを高めることは、社内全体の発展につながります。

営業力や顧客満足度を上げるためにも、自社商品やサービスについての情報共有は重要になります。

今すぐできる属人化への対処方法

属人化によるデメリットが大きく、悩んでいる方もいるかもしれません。

業務標準化が根本的な解決方法になるのですが、難しい場合も多いでしょう。

この項目では、今すぐできる具体的な対処方法について説明しますので、困ったら参考にしてみてください。

以下が今すぐできる属人化への3つの対処方法です。

・業務内容を他の社員に知ってもらう
・研修・勉強会の開催を提案する
・転職を視野に入れる

業務内容を他の社員に知ってもらう

おすすめするのは、業務内容や負荷を上司や同僚に伝え、協力を得ることです。

属人化の影響で、業務量が多く自分の負担が多い人のための対処法になります。

意外と属人化による他の社員の悩みを把握していない可能性があるためです。

健全な組織であれば、他の社員と現状の問題点を共有することで協力を得られるでしょう。

研修・勉強会の開催を提案する

研修や勉強会を提案し、スキルやノウハウを広げるのも効果的です。

属人化している業務を担えることで、後継者育成や休暇のとりやすさにつながります。

教えることで仕事を再確認し、新たな視点を得る機会にできるでしょう。

属人化による長時間労働や休暇の取得困難は、研修や勉強会で解消できる可能性があります。

転職を視野に入れる

会社が属人化の解消に消極的な場合、転職を考慮する時期かもしれません。

属人化には、人手不足や業務手順の不備といった会社側の問題がたくさん潜んでいます。

要するに社員を大切にしていない証拠なので、属人化を許容するような職場は避けるべきでしょう。

転職を考えるなら、自らが求めるキャリアや仕事の内容を明確にすることが大切です。

自分自身の理想とする仕事を明確にすることで、転職先の選択ミスを避けられるでしょう。

属人化の解消が困難なときは、自分の能力が発揮できる環境へ転職するのも手段の一つです。

属人化を解消する業務標準化のステップ

属人化の解消のためには、業務を標準化するのが最も有効な手段です。

標準化作業の際は、混乱や反発のリスクを減らすために、優先順位の高い業務から標準化するのがコツです。

具体的な標準化のステップと円滑に進めるコツをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

以下が標準化を進めるためのステップです。

1．業務内容を洗い出す
2．標準化のメリットを明確化する
3．標準化する業務に優先順位をつける
4．マニュアルを作成する
5．PDCAを回していく

具体的に見ていきましょう。

1．業務内容を洗い出す

最初に全ての業務を洗い出し、属人化している業務が何かを把握することから始めてください。

属人化が起こっている場合、社内業務の全てを把握している社員が誰もいない場合が多いです。

業務の全体像を理解することで、その業務の目的や目標、どの部分が属人化しているのかを明確にできるでしょう。

業務内容を洗い出し詳細を知ることが、その後の標準化作業における重要な指標になります。

2．標準化のメリットを明確化する

標準化のメリットを具体的に示すことで、他の社員から理解と協力を得やすくなります。

属人化の解消と標準化作業を行うことは、大量の時間とリソースを必要とする行為です。

そのため、大変さに見合う相応のメリットがあることを示さなくてはなりません。

人によっては属人化を解消することで、評価が下がる懸念を持つ可能性があります。

今後業務が標準化しても、評価される機会をもうけるとベストでしょう。

メリットを明確にすることで、協力を得やすく円滑に標準化作業ができます。

3．標準化する業務に優先順位をつける

重要で改善に急を要する業務を把握し、標準化する業務に優先順位をつけましょう。

限られた時間やリソースを最大限に発揮し、効果を高められるからです。

また、優先順位をつけ段階的に標準化を進めることは、リスク管理の点でも有効です。

業務変更による混乱が生じにくく、問題が発生しても対応が容易になります。

優先度の高い業務から標準化することで、リスクを抑えつつ効果を最大限にできるでしょう。

4．マニュアルを作成する

標準化を達成するためには、具体的でかつ実行可能なマニュアルの作成を行いましょう。

マニュアルがあれば、その業務を誰が担当しても同じ手順を踏めるようになります。

個々のとらえ方により、誤った判断や行動をするのを防ぐ効果が期待できます。

また、マニュアルは新入社員のトレーニングと、既存スタッフの復習にも役立つでしょう。

教育にかける時間を短縮できるので、業務の効率化がより促進されます。

マニュアルは、業務の効率化と一貫性を担保できる内容であることが求められます。

5．PDCAを回していく

マニュアルが完成したら終了ではなく、PDCAを回し修正しながら運用するようにします。

効果的な運用のためには、現状にマッチし利便性の高いマニュアルであることが求められます。

実際に運用しないと分からない部分も多いので、PDCAを回し改良することも大切です。

標準化を達成するためにはPDCAを回し、より効果的な業務方法を模索することが必要になるでしょう。

まとめ：属人化は会社全体へのデメリットが大きいため改善が必要

一部の業務を除き、属人化するのはデメリットが大きい状態です。

特に労働環境が悪化している場合は、早急に改善が必要になります。

解決策として現状を周りに伝える・勉強会や研修で業務を担える人を増やすのが有効です。

根本的な解決方法は業務の標準化ですが、大量の時間とリソースが必要になります。

そのため、属人化の解消を目指しても反対される可能性があります。

会社側が属人化の解消に消極的なときは、転職して環境を変えるのが望ましいでしょう。

働きやすい職場を選ぶには、情報収集をしっかり行い慎重に転職先を選ぶようにしてください。

おすすめはキャリアコーチングのサポートを受け、一緒に転職活動を行うことです。

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